フリクリオルタナ 考察
こんばんは。
今日はフリクリ オルタナを観てきた感想を書こうと思います。
※ 以下、ネタバレを含みます。
フリクリ無印
もともとthe pillowsのファンであったものの、フリクリ無印は未視聴でした。
先日やっと視聴して予習したてほやほやです!という感じ。
無印の感想はというと、わかりづらいものの、テーマがあり、謎もあり、わからんなりの収穫みたいな手応えもあり、the pillows、フリクリ超かっこいい!という感じ。
オルタナ鑑賞直後
今回もきっと視聴者置いてけぼりのキレッキレなテンポでthe pillowsの音楽に乗せて、挑戦的なアニメとロックな物語に魅了されるのだろうと期待をし、事前情報なしにいざ行ってきた直後の感想は以下の感じです。
— えぽな (@epona517) 2018年9月17日
僕は観客なんて置いてけぼりのフリクリを期待していたんですよぉ!僕はぁ!寄り添って来ないでぇ!
— えぽな (@epona517) 2018年9月17日
という感じで、もうすでにオルタナのことを見ていない。
だって、プログレの作画どう見てもキレッキレやもん・・・。
無印を観たばかりの頭で観に行ってしまったのもあるけれども。
違和感
もうこの時点での僕の評価と言えば、「平凡な女子高生の生活日常ドラマにチョチョイとハル子がお節介を焼いたり助けたりする物語。ハル子以外はみんなモブみたいで、特徴も可愛くもカッコ良くもなく、脚本も作画も物語性もテーマも演出も全て並み。輝いているのはthe pillowsの音楽だけじゃないか・・」という感じでしょうか。
おまけに、the pillowsが流れてるのに、海は広いなを被せてくるし・・。
けれども、時間を置いて冷静になり、改めて友人の以下のツイートを見たときに、違和感を感じたんです。
前作ハル子はアトムスクが目的で、その為なら地球なんて最悪どうなったって構わないみたいなキャラだったのに今作はカナ達に人生訓を伝えるお節介お姉さん以上の何物でもなかった
— おでん(再) (@charon_alone) 2018年9月17日
それに今作はハル子がいなくてもストーリーが成立するというか、イベントが進んでいく感が強かった
今回のハル子の役割って一体・・?
オルタナで伝えたかったことって一体・・?
誰に対するメッセージがあったの・・?
誰にでもわかる女子高生の日常を描きたかっただけ・・?
あのひねりだらけの無印フリクリがこんなメッセージだけで終わるの・・?
と思った途端、いろんな違和感があったことに気付いた気がして、久しぶりにブログを書いてみようと思いました。
考察と言ってしまうと稚拙ですが、個人の感想として楽しんで頂ければ幸いです。中には批判的な表現もあるかと思いますが、そんなもんかなと軽く流して頂ければ尚幸いです。
※ 一度しか視聴していないので曖昧な部分があると思います
ヒジリーの違和感
ハル子に次ぐ、美人ポジションキャラ。でも正直、そう言われてもパッとしない。
前作のまみみの方が全然エロい。
ヒジリーは高校生と言えど、持ち前のルックスを生かして、大学生起業家のような意識高めの自称フォトグラファーと付き合います。
しかし程なく、上級美人のハル子に寝取られ、プレゼントされた高級ネックレスも返せと言われます。
命を助けるものの・・・?
命の危険が迫っているというのに自身の成功に目がくらみ良い画を撮ることに必死になる大学生。そんな彼を、身を呈し助けるヒジリー。壊れる大学生のカメラ。手を怪我したヒジリーを尻目に大学生は「折角の良い画が!くそお!」と地面を叩きます。
僕は思いました。
「ああ、よくあるクソ男パターン」
そして次に、
- ヒジリーは大学生に失望し、こんなやつの何に固執して居たんだと目が覚める
- 命を粗末にしないで!と怒り、頬を叩く
というお決まりパターンのどちらかかな、と物語の進行を予測しました。
しかし、物語は僕の予想を裏切りました。
ヒジリーはなんか爪をカリッとしただけで、そのことには言及しませんでした。
復縁を断るヒジリー
騒動が落ち着いた後、何故かまたヒジリーに復縁を申し出た大学生に対してヒジリーは、「背伸びしてた」「他人を上から見てバカにしてた」と反省した上で、「このネックレスは合わないわ」と返却し、大学生をフリました。
大人ぶるのをやめて、等身大の自分に、子供に戻ることにしたのです、素直に。
ここで僕は2つ違和感を感じました。
それは
フラレたのに、落胆するでも、怒るでもなく、「まあ仕方ないよね」みたいな顔で済ました大学生。
「背伸びしたい」とか「他人を上から見てバカにしてた」とか、フリクリにとっては大好物なのでは??
モッさんの違和感
女の子キャラとしては珍しくデブキャラです。
モブ絵が成せる技なのでしょうか。最後まで愛着も湧きませんでした。
という話は置いておいて、モッさんにフォーカスの当たった回では、人一倍自分の夢に貪欲な姿が描写されます。
「自分の夢は自分の力だけで叶えるんだ!!」と。
いやはや中々ロックなこだわりじゃないですか。
そして更に、カナヘ畳み掛けるモッさんを見て僕は
「いやちょっとそれは言い過ぎでは・・流石のカナも泣いてしま・・」
と思いましたが、泣きませんでした。
いや、それどころか、モッさんのことを手伝いたい、友達なんだもの。という一点張りで食い下がりません。
そして、モッさんはとても微妙な固い表情をしつつ、カナたちに手伝ってもらうことを決意します。
コンテストでの挫折・・・?
友達の助けを得て、なんとか衣装を完成させるものの、コンテスト結果は最優秀賞どころか、優秀賞にも入りませんでした。
結果を受けてしかし、モッさんは「結果が全て」と現実を受け止めます。肝が座っている。
そして僕は思いました。
「ああ、よくある、失敗に挫けることなく、諦めることなく、新たな目標に向かっていく美しき若者の青春 が描かれるパターン」だ、と。
しかし、物語はまたも僕の予想を裏切ります。
最優秀賞の作品を見ないまま、つまり自分に何が足りなくて、自分の上にはどれだけ才能に溢れる人間がいるのかを確認しないまま、ハル子がモッさんの衣装を着て現れます。
そして、観客を魅了したハル子と、お立ち台の上からの景色を見たモッさんは高らかに宣言します。
「モデルになる!!」と。
僕はここでまた2つの違和感を感じました。
- モッさんは挫折したり自分を顧みることもなく、新たな興味に走ってしまった。いやいや服飾デザインへの熱量はどうしたのか。
- 若者の挫折とか夢とか、フリクリにとっては大好物なのでは??
カナの違和感
最後にオルタナの主人公とも言えるカナについて。
カナのテーマは恋愛でした。冴えないバスケ部の、冴えないマネージャーの草食系男子である佐々木くんのことが気になっているという伏線の回収回。
カナがなぜ気になっているかは、明確に描写されていなかった気がします。
なんとかなんとか菌のせいで・・好きだったバスケができなくなって・・それでマネージャーになって・・それで???って感じです。
嫉妬やアクシデントで自分の気持ちに気付き・・・?
やきもきする二人の間にハル子が割って入り、嫉妬させたり、嫉妬させたりして、恋愛事情を煽ります。
更に、態度で示せない草食系で奥手な佐々木を、カナに押し倒させるハル子、あわやチュー!
・・・しかし、ここでカナは「ドキドキしない」と、チューをせずに終わります。
僕の友人曰く、「本当に好き」じゃないことが分かって良かった!と言っていました。
でも僕は、「この回の物語の必要性って一体何???」と思いました。
「本当に好き」ではなかったことを描くなら、「本当に好き」であることも描くべきではないでしょうか。
ここでまた違和感を感じます。
- なぜドキドキしなくなったのか?
- 「私にはまだ早かった」という恋愛ものの話にしては異様な結論
- フラレたはずなのに、照れたようにほくそ笑むだけで悲しみも憂いも何もない佐々木
違和感のなかった親友、ペッツ
この話の中で、もっとも自然な話運びかつ、まともな人間だったのが、ペッツでした。
カナとは幼馴染で唯一無二の親友だったはずのペッツでしたが、最後の最後に「友達友達うざいんじゃボケェ!」と言い残して、火星へ飛び立って行ってしまいます。
カナたちとつるむことを選ばず、滅亡しそうな地球から脱出しました。
ペッツに関しては、ペットボトルロケットの話が伏線になっていそうですが、うまく繋がりませんでした。
また、あだ名が「ペッツ」になった理由もよくわかりませんでした。
hetadaと書くとtが多くて・・と言っていたような?でもそんなわけでもないし・・
ただ、作中のキャラクターの中で、一番葛藤を持っていて、一番人間らしかったのではないかと思います。
カナの思い
最後の回、メディカルメカニカのアイロンが動き出し、地球を真っ平らにしようとします。
メディカルメカニカのロボに囲まれ絶体絶命の中、時空をも歪めかねない壮大なパワーをカナが覚醒させます。
「友達と仲良く、毎日を毎日毎日していたかった」という旨のセリフとともに、ブラックホールのような異次元空間を出し、地球にいる全ての人類や生き物をワープさせてしまいます。
正直カナのここの言葉はラストにふさわしいわけでもなく、心に響くものでもなかった気がするので全く覚えていません・・。
ある2人を除いて
カナの超パワーにより、タイムリープしたのか?ループしたのか?異世界転移したのか?冒頭と同じ動画が流れ、カナが「行ってきます」と家を出ました。
そして友達と合流します。
しかし、そこにはペッツの姿はありませんでした。
なぜならペッツは火星にいたため、地球から地球でない星へワープはしていないためと思われます。
また、ハル子も地球でない岩場だらけの荒野に放り出される描写がありました。
カナにとって不要な存在
カナのことを盛大に「友達にならなければよかった」と言い放ったペッツ。
カナの日常を振り回し乱すハル子。
この2人は言わば、カナにとっては要らない存在なのでしょう。
カナが再構築した世界に、存在させる理由はありません。
フリクリ オルタナのメッセージ
まとめに入りたいと思います。
欲望を閉じ込めるな
前作、フリクリ無印では、ナオ太の成長を描いた物語でした。
ナオ太は、「大人になりたい」と思い、「兄を超えたい」と思い、「ハル子が好き」と思い、その度に成長して見せ、アトムクスを召喚し、メディカルメカニカをぶっ飛ばします。
オルタナはどうでしょうか。
ヒジリーは大人になることを止め、モッさんは目標を変え、カナは恋愛感情を勘違いだったとしました。
身の丈に合わないことを諦めたり、失敗や傷つくことを恐れたり、恋愛で人とぶつかって気まずくなったりすることを避けました。
みんな、欲望も好奇心も泥臭さも捨てて、平穏を求めてしまうのです。
少年少女の三大葛藤要素である「理想の大人」「夢や目標」「恋愛」をことごとく排除した、とても保守的な日常をカナは望み、膨大なパワーで世界を再構築しました。
しかし、再構築した世界にはきっとまだメディカルメカニカのアイロンはあるのでしょう。
デコから出てくる武器の正体
葛藤した少年少女には何が生まれるのでしょうか。
悩んで悩んでたくさん頭を使った彼ら彼女らの頭は時に変形します。
そして時に武器が現れます。
そしてその武器を使って、困難に立ち向かい、打ち勝ち、成長することができるのでしょう。
しかし、オルタナでは誰も戦いませんでした。戦っていたのは、ハル子とペッツだけ。
本当のところペッツは、カナのことを助けたかったのではないでしょうか。
あの大きな手は、アイロンを宇宙の彼方に放り出すはずだったのではないでしょうか。
カナの作り出す世界では、また1人また1人と葛藤を持つ少年少女は姿を消し、やがて1人になり、世界をワープさせるための原動力すらも失ってしまうのではないでしょうか。
アイロンの正体
自由と尖ったもんを愛するハル子、嫌いな言葉は「真っ平ら」。
アイロンを壊すことのできる人間のいない世界は、それは平坦に、真っ平らになるのでしょう。
つまり、その世界とは「理想の大人」になることを諦め、「夢や目標」を定めず、「恋愛」から逃げる少年少女しか居なくなってしまった世界。
みんながみんな「普通」を望み、葛藤もなく、何もないことを望む世界。
凸凹でない、個性の生まれない世界。
そしてそんな世界は、どれだけ破天荒で乱痴気でイカレたハル子みたいな大人でも、どうすることもできないんですよ。
少年よ、大志を抱け
いのち短し恋せよ少女
終わりに
最初はなんてクソ映画なんだ!the pillowsの無駄遣いだ!と思っていました。
いやしかし、なんて最高にロックな映画なんだこれは!!と思うんですよ。
だってですよ。
「ハル子以外はみんなモブみたいで、特徴も可愛くもカッコ良くもなく、脚本も作画も物語性もテーマも演出も全て並み。」
になっちゃうよ!って!
身を呈して!!!マジマジと見せつけられてるんですよ!!!!(言いすぎ?)
しかも、the pillowsのロックミュージックだけが燦然と輝いていたのはこういうことかー!!そりゃより際立つよね!?
初見じゃわかりづらい!
もう1回、観に行こうかな。
追伸
きっとアマラオは地球に居るうちに個性を削られて、眉毛が普通になっちゃったんだろうね。
別人でした。笑